2026年7月28日16時27分、熊本県宇城市と八代郡氷川町で震度7を観測する地震が発生した。8月3日時点で死者38人、負傷者123人にのぼると報じられ、熊本県内10市10町1村には災害救助法が適用された。避難生活が続く一方で、被災した住民が生活再建の第一歩として直面するのが「り災証明書」の申請である。この一枚の証明書が、支援金の金額から税金の減免まで、その後の暮らしを大きく左右する。
り災証明書とは何か――被災者支援の”入り口”
り災証明書とは、地震や水害などの災害で住宅が受けた被害の程度を市町村が証明する書類である。内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」に基づき、市町村の調査員が現地で被害認定調査を行い、「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「準半壊に至らない(一部損壊)」の6区分のいずれかに判定する。
被災者生活再建支援金の申請だけでなく、応急修理制度の利用、税金や国民健康保険料の減免・猶予、義援金の配分など、ほとんどの公的支援はこの証明書の区分をもとに決まる仕組みになっている。住宅の損害割合が明らかに10%未満で、申請者が「一部損壊」の結果に同意できる場合は、現地調査を省略して写真だけで判定する「自己判定方式」も用意されている。
熊本市の申請窓口と期限
熊本市では2026年7月30日午前9時から、各区の福祉課と複数の総合出張所で窓口申請の受け付けを始めた。マイナンバーカードを使えばマイナポータルからオンライン申請もできる。必要なのは本人確認書類と申請書で、住民票の住所と実際の居住地が異なる場合は光熱費の領収書など生活実態を示す書類も求められる。関連する被災届出証明書は原則として被災から1か月以内の申請が必要とされており、動ける状態になったら早めに手続きすることが望ましい。
支援金はいくらもらえるのか
被災者生活再建支援法に基づく支援金は「基礎支援金」と「加算支援金」の二階建てになっている。複数世帯の場合、基礎支援金は全壊で100万円、大規模半壊・中規模半壊で50万円が支給される。これに加えて、住宅を建設・購入する場合は200万円、補修する場合は100万円、賃借する場合は50万円の加算支援金が上乗せされる。
つまり、全壊した住宅を建て替える世帯は、基礎と加算を合わせて最大300万円を受け取れる計算になる。単身世帯の場合は、これらの金額の4分の3が支給額の目安となる点には注意しておきたい。
半壊や一部損壊はどうなるか
支援金の対象は原則として全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊の世帯であり、一部損壊は支援金の直接の対象にはならない。ただし一部損壊であっても、応急修理制度や税・保険料の減免、義援金の配分といった別の支援策の対象になることがあるため、被害が軽くても証明書自体は取得しておく価値がある。
り災証明書があれば使える他の支援策
り災証明書を取得すると、被災者生活再建支援金以外にも複数の制度に道が開ける。住宅の応急修理制度を使えば、自治体が業者に工事を発注する形で修理費の補助を受けられる。固定資産税や国民健康保険料、水道料金などの減免・猶予も、多くの自治体でり災証明書の提示が条件になっている。義援金の配分も被害区分ごとに金額が決まる仕組みが一般的だ。
証明書の交付には現地調査を伴うため発行まで時間がかかる場合がある。この間の当面の生活費や住まいの確保が必要な世帯には、証明書の発行前でも申請できる災害救助法上の応急的な支援策が別途用意されている点も知っておくとよい。
熊本以外に住んでいても知っておく理由
今回の地震は熊本県内の出来事だが、り災証明書の仕組み自体は全国共通の制度である。日本のどの地域でも地震や豪雨で住宅が被害を受ける可能性はあり、いざというときに「まず何をすればよいか分からない」状態を避けるために、平時から制度の存在を知っておく意味は大きい。親族や知人が被災地に住んでいる場合、申請の流れを知っていれば、遠方からでも手続きを手伝うことができる。
押さえておきたいポイント
- り災証明書は住宅被害の程度を市町村が証明する書類で、被災者生活再建支援金など公的支援の申請に必須となる
- 判定は「全壊」から「一部損壊」まで6区分あり、損害割合10%未満なら写真のみの自己判定方式も選べる
- 熊本市では窓口・オンラインの両方で申請でき、関連する被災届出証明書は被災から1か月以内の申請が原則
- 支援金は基礎支援金と加算支援金の二階建てで、全壊して建て替える場合は複数世帯で最大300万円が目安になる
- 一部損壊は支援金の直接対象外だが、応急修理や税・保険料の減免など別の支援を受けられる場合がある
独自の視点|自己判定方式は「調査の順番」を動かす仕組みでもある
制度の細部を重ねると、単なる簡便策ではない役割が見えてくる。今回の災害では熊本県内10市10町1村に災害救助法が適用されており、対象となる住宅は相当な数にのぼる。り災証明書の発行には市町村の調査員による現地調査が必要で、人手には限りがある。損害割合が明らかに10%未満の場合に写真だけで判定できる自己判定方式は、申請者の手間を減らすと同時に、調査の担当者を被害の重い住宅へ振り向けやすくする効果があると考えられる。ただし自己判定を選ぶと一部損壊で確定するため、判断は慎重に行いたい。
独自の視点|金額差が最も大きく出るのは「区分の境目」にいる世帯
支援金の設計を数字で追うと、差が出る場所がはっきりする。基礎支援金は全壊で100万円、大規模半壊・中規模半壊で50万円である。加算支援金は建設・購入が200万円、補修が100万円、賃借が50万円だ。全壊した住宅を建て替える複数世帯は最大300万円になる一方、判定が一段軽く補修を選ぶ場合は総額が大きく下がる。単身世帯はさらに4分の3が目安となる。制度上、判定区分が一つ違うだけで受け取れる総額が数十万円から百万円単位で動く構造だと言える。だからこそ、判定結果の内容と手続きの流れを早めに確認しておく意味は大きいのではないかと考えられる。支援策の内容は今後の追加措置や自治体の運用次第で変わりうるため、最新の案内を確認してほしい。
参考・出典
- NHKニュース「地震の死亡38人 医療機関や学校の被害も(8月3日時点)」
- 熊本市公式サイト「住家の『り災証明書』の発行について」
- 内閣府 防災情報のページ「被災者生活再建支援法」
- 公益財団法人 都道府県センター「被災者生活再建支援事業:支援金支給概要」
- くまもと被災者支援ナビ「り災証明書ガイド」
- 熊本日日新聞「罹災証明申請、受け付け開始 熊本市」
- 国土交通省「令和8年熊本地震における被害と対応について」


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